Tourism passport web magazine

学校法人 大阪観光大学

〒590-0493
大阪府泉南郡熊取町
大久保南5-3-1

学校法人 大阪観光大学

〒590-0493
大阪府泉南郡熊取町 大久保南5-3-1

大阪観光大の学生や教員が運営する WEBマガジン「passport」

Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”

「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、 大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。 大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。

国際都市ジュネーブ(スイス)

グローバル社会といわれる現代社会で、皆さんは国際都市というとどのようなまちをイメージしますか?スイスのジュネーブというまちを知っていますか?

スイスといえば、美しいアルプスの山々といった大自然を抱く観光地であり、有名な食べ物といえば、チョコレートやチーズを思い浮かべることでしょう。スイスの公用語は国境として接している国の言語であるドイツ語、フランス語、イタリア語、とスイス古来の言語であるロマンシュ語の4つの言語です。登山鉄道が整備されており、ユングフラウヨッホやアイガー、マッターホルンなど4000メートル級の山々の頂上を間近に眺めることができる日本人にも馴染みの深い観光地や、首都であるベルンではドイツ語が日常語として話されており道路標識などもドイツ語です。

ジュネーブは、スイスの西端部に位置し、三日月形の湖で面積が584平方キロメートル(うち234平方キロメートルはフランス領)のレマン湖の湖岸、北緯46度12分東経06度09分にあるフランス語圏のまちです。同じくレマン湖沿いのスイスでジュネーブの東隣には、バレエコンクールや国際オリンピック委員会(IOC)の本部があることで有名なローザンヌがあります。このローザンヌのまちもフランス語圏です。今年2月に韓国で開催された冬季オリンピック?パラリンピックに引き続き、2020年には日本の東京でオリンピック?パラリンピックが開催されます。これらの開催国を決定する会議は、ローザンヌのIOCで開かれ、IOCで第一義的に使われる言語はフランス語です。オリンピック?パラリンピックの開会式や表彰式などのアナウンスに耳を傾けたことはありますか?まずフランス語、次に英語、そして開催国の言語の順番で行われます。東京大会の時には、是非、耳を澄ませて聞いてみてください。

ローザンヌの話はさておき、ジュネーブは、観光客にとってはスイスの主要な観光地を回る際の出入り口というよりも通過地点であることが多いようです。ジュネーブのコアントラン国際空港には、フランスの国内線も到着しており、フランス側の出入り口があります。ジュネーブ駅(コルナヴァン駅)からはフランスの新幹線TGVやイタリア、ドイツへの国際列車も多く発着しています。市の中心部からもその姿を拝むことができ、車で1時間ほどのところに位置するアルプスの名峰モンブランの麓のまちシャモニーはフランス領です。レマン湖沿いのフランス領には、皆さんが良く日本で目にするミネラルウォーターの源泉地であるエビアンもあります。ジュネーブは周囲をすべてフランスに囲まれており、市の中心部から車で10分から20分も走れば、国境を越えてフランスです。国境といわれると大きなフェンスや、国境警備員にパスポートを見せて荷物のチェックを受けるというイメージがありますが、ジュネーブと周囲のフランスとの間には、ただそのまま道路がつながっていて国境を感じさせない場所が多々あります。いつのまにか道路標識の形が変わっていて「あれ、フランス側を走っている」ということもあり、多くの人が、国境を越えて学校や仕事に通ったり、買い物や食事に行ったりします。

ジュネ―ブには国際連合(国連)の欧州本部がありますが、それ以外にも皆さんが良く耳にするWHO(世界保健機関)やICRC(赤十字国際委員会)の本部など数多くの国際機関があります。ジュネーブは観光のまちというよりも、国際機関の集まるまちであり、外交官だけでなく、各国の政府から派遣された人々や、国際公務員と称される人たちが多く働くまちだといえます。国連加盟国193ヵ国すべての国から派遣された人々はもちろん、留学生や研究者などが生活し、観光客だけでなく世界中の人々が日々行き来して世界の平和や安全を願い、経済や生活の安定のために、国際会議を開き、議論が交わされています。

国連欧州本部の前にある広場には高さ10メートルを超える巨大な「壊れた椅子」のオブジェがあります。1997年に設置されたこの「壊れた椅子」には脚が3本しかありません。世界中の紛争で敷設された対人地雷撲滅と平和を願い、世界中から国際都市ジュネーブに集まる人々に平和について考えてもらおうという願いが込められています。

さて、国際機関で働く人々のなかには、フランス側に住んでいる人も多く、市内を走る車もフランスのナンバープレートを付けたものを見かけるのは、あたりまえです。フランスはEU(欧州連合)加盟国なので流通する通貨はユーロです。スイス周囲のヨーロッパの国々は全てEU加盟国ですが、スイスはEU非加盟国なのでスイスフランという別の通貨が流通しています。買い物をするにしてもジュネーブではスイスフラン、フランス側ではユーロです。今日の夜は新鮮な魚を食べようと考えた時、フランスの沿岸部から流通した新鮮な魚が購入できるから、晩御飯のおかずを買いにフランスのスーパーへなどというのも日常的です。国境のまちで暮らす人々は財布の中に両方の通貨を入れている人が殆どですが、スーパーなどでは、レジでどちらの通貨でも支払いができる場合もあります。

International(国際)という英語は「inter(中に入る)」と「nation(国家)」がもとになっており、国の際(きわ)を越えて中に入っていき交流するという意味を持っています。ジュネーブで働く人々や暮らす人々はまさに毎日、国の際(国境)を越えて出入りして生活しています。ジュネーブは、そういった意味でも国際都市であるといえるのかもしれません。

記事一覧