Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”
「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、
大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。
大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。
「大学で学ぶ」ということについての個人的な考え
私は普段、経済学とその関連科目の講義を行っていますが、その際に学生から「この科目って、役に立ちますか?」という質問をよくされます。以前はその質問に対して、笑顔できちんと(?)答えていたのですが、最近は「役に立ちません!」と即答することにしています。ただ、この答えには省略された前段があって、当然のことながら経済学自体が役に立たないと考えているわけではありません。では、先ほどの答えの中で省略した言葉はどのようなものかというと、それは「(大学に来てそんなくだらない質問をするようなあなたには、経済学であろうと何であろうと、勉強したところで何も)役に立ちません!」というものです。
さて、話は全く変わりますが、我々競馬ファンにとってこの季節、すなわち春のGⅠレースが続くこの時期は、1年の中でも最も心の浮き立つ日々です。桜花賞、皐月賞といったクラシック?レースをはじめ、日本競馬において最も伝統と重みのある春の天皇賞、そしてこれを書いている5月4日以降も、NHKマイルカップ、ヴィクトリアマイル、オークス、そして競馬の祭典日本ダービーと大きなレースが続き、それらのこと考えているだけで心が浮き立ってきます。私自身は、競馬のギャンブル的な要素にはさほど興味はなく、それよりも何が1着で来るかといったレースの予想自体に興味があります。競馬の予想をする際には、多くの人が同じようにしているとは思いますが、数多くの情報とデータを基に勝馬を予想していきます。例えば、血統、距離適性、脚質、直前のレースの成績、競馬場の特徴、コースとの相性、どの騎手が乗るのか、厩舎からの情報、調教での状態、当日の天候、開催何週目のレースなのか、当日の馬場状態、レース展開、走破タイム予想???等々、ありとあらゆる可能な限りの様々な要素を考慮して予想を行います。その上で、レースのシミュレーションを頭の中で何度も行い、そして最後の最後になってあらゆる検討を基礎とした「勘」に頼り、ようやく1頭のサラブレッドを選択することになるのです。
読者の皆さんは「一体こいつは何を力説しているんだ?」と思っていることでしょう。実は、社会に出て仕事の現場で何らかの決断をするという状況は、上記の勝馬予想とさほど大差はないと個人的には考えています。現実社会において、我々が直面する課題にはほとんど正解というものはありません。仮に正解があったとしても、それは時代や環境が変わればすぐに正解ではなくなります。グローバル化が進む現在、その変化のスピードはさらに速くなっています。そのような世界を生きていくために、我々は大量の情報を素早く処理し、状況や環境の変化に適切に対応し、かつぶれない軸や視点を持って社会や未来を見通していかなくてはなりません。そして、そのような力こそが、真に「役に立つもの」ではないかと思います。
では、そのような力を身につけるためにはどうすればいいのでしょうか?これは私個人の意見ですが、ある科目が「役に立つ」かどうかなどそんなくだらないことは考えずに、目の前にあるいろいろなことを、とにかく学ぶことです。人類がこれまで積み重ねてきた叡智を修得し、人間としての能力を磨くこと。それが一番の近道だと思います。
ところで、競馬の予想のところで最後の最後は「勘」と書きましたが、これは現実社会でも同じです。しかし、これは山勘ではなく、あらゆる知識、情報、データを検討した上での「勘」でなくてはなりません。その点からも、大学生の間は、やはり学べるものは何でも学んでおくという姿勢が重要ではないでしょうか。